コラム

2025.10.20

契約前に知っておきたい、フリースクール等選びのポイント

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目次

三者三様のフリースクール等

フリースクール等の運営主体や施設の規模、活動内容は様々です。そのため、フリースクール等を選ぶに当たっては、お子さんにとってよい施設であるか、しっかり事前に情報収集をして確認をすることが大切です。以下では、その一助として、法的な観点から留意すべき事項について考えたいと思います。

なお、フリースクール等には明確な定義がなく、施設の名称も様々であるため、本コラムでは、学校や教育支援センター以外の、日中の時間帯に不登校の子供が学習をしたり、興味のあることに取り組んだりできる場所を、フリースクール等と表記しています。

支払関係は明らかになっているか

お金の支払関係は、トラブルが最も生じやすい事項です。

まず、利用申込み時に締結する契約書類の中に、初期費用や月額利用料(毎月払の場合)が明記されていることを確認しましょう。見落としやすいのは、イベント参加費や教材費などの臨時的な費用の扱いです。特に以下の点については、少なくとも口頭での説明を通じて、事前に確認しておきましょう。


  • 臨時的な費用についても初期費用・月額利用料に含まれているのか、都度精算が必要となるのか。
  • 都度精算であるとすれば、そのような臨時的な費用にはどのようなものがあり、1年間の総額はどの程度見込まれるのか。

欠席した場合や、契約期間の途中で休会・退会した場合の支払いがどうなるのかについても、契約書類に明示されるべき事項です。具体的には、返金の有無・条件、返金がある場合の方法(日割精算か、月末精算か等)、休会・退会の申出期限などが、確認すべきポイントとなります。

サービス内容は明瞭になっているか

サービス内容がイメージと違ったという事態も、できる限り避けたいところです。

利用可能な曜日や時間帯は、契約書類に明示されていることが望ましい事項といえます。個別指導・個別対応、時間外利用(延長や早朝利用)、送迎などがオプションサービスとして予定されている場合には、オプション料金をはじめとする利用条件についても確認しておく必要があります。

一方で、活動内容の詳細や指導の体制といったサービスの具体的な中身については、契約書類に明記することが難しいという場合もあります。とはいえ、これらはフリースクール等を選ぶ上での重要事項の1つとなるため、契約書類には明記されないとしても、事前に十分な説明を受けておく必要があります。少しでも分からないことや不安なことがあれば、事前に聞いてみましょう。

在籍校との連携は十分になされているか

フリースクール等は正規の学校ではないため、フリースクール等に通い続けても、これによって当然に学校の卒業資格が得られるわけではありません。義務教育の対象となる小・中学生は、在籍校を卒業することにより、学校の卒業資格を得ることになります。

ただ、フリースクール等での活動を、学校の出席扱いとしてもらえるケースもあります。
在籍校による成績評価にあたっては、概ね次のような条件のもと、フリースクール等での学習内容等を考慮できることになっています。


  • 学習の計画・内容が、在籍校の教育課程に照らして適切であること
  • 在籍校と保護者・フリースクール等との連携が十分に図られており、保護者・フリースクール等を通じて、在籍校が不登校の子供の状況を定期的・継続的に把握していること
  • 保護者・フリースクール等を通じた間接的な関わりのみならず、在籍校自体が、訪問やオンライン面談等を通じて、不登校の子供との直接の関わりを維持するよう留意していること

フリースクール等が在籍校との連携に積極的であれば、フリースクール等における学習内容を在籍校の成績評価に反映させるプロセスが円滑になることもあるため、在籍校(又は所管の教育委員会)との情報連携や出席の扱いに関する考え方や、可能であれば過去の実績について、事前に確認しておくとよいでしょう。

おわりに

東京都の調査によれば、子供をフリースクール等に通わせている保護者が現在のフリースクール等を選んだ理由の上位3位は、上から順に「お子様の反応」「活動内容」「自宅からの距離」となっています。本記事で紹介したような観点は、フリースクール等選びの際に前面に出てくるものではないと思いますが、本ポータルサイトで民間支援の情報を検索する際には、トラブルを避けるためにも、頭の片隅に置いていただければ幸いです。

NOTE

フリースクール等の運営主体は、株式会社やNPO法人など様々です。ご検討中のフリースクール等の運営者が都内のNPO法人の場合は、東京都のウェブサイト等を通じてこれらの書類を確認することにより、実情を窺い知ることができるかもしれません。併せてご参照ください。
(法人情報検索(簡単検索)|東京都生活文化局)


記事を監修した人

弁護士 所属:第二東京弁護士会 須賀裕哉

須賀 裕哉 弁護士 所属:第二東京弁護士会

2015年東京大学法学部卒業。2017年東京大学法科大学院修了。幅広い法律相談を受けた経験を有する。企業法務案件のほか、教育行政を中心とする学校関係の法務対応も行っている。

【参考文献】


■文部科学省「教育機会確保法パンフレット」
https://www.mext.go.jp/content/20250217-mxt_jidou01-100002764_4.pdf


■文部科学省「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について(通知)」令和6年8月29日(6文科初第1126号)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00002.htm


■文部科学省「高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について」平成21年3月12日(20文科初第1346号)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/1309943.htm


■東京都教育委員会「未来を創るかけがえのない子供たちの自立に向けて~不登校の子供たちへの支援のポイント~(令和3年1月)」16頁
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kyoiku/point03


■東京都教育委員会「フリースクール等に通う不登校児童・生徒支援調査研究事業報告書(令和6年8月)」
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kyoiku/2024report-1