コラム

2026.1.28

「起立性調節障害」って何?

朝、起きられないのは「怠けている」から?

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目次

起きるのが辛くて、学校に行けない

不登校になるきっかけのひとつとして挙げられることの多い、「生活リズム」の乱れ。

夜は遅くまでゲームをしていて、朝になっても起きてこない。朝、体調が悪そうにしているので学校を休ませたのに、昼頃から元気になり、夜はまた遅くまでゲームをしている……。

そうした悪循環から抜け出せず、「気がつけば学校に行けなくなっていた」という子供は珍しくありません。

保護者からすると怠けているように見え、「ちゃんとしなさい!」と、声を荒げてしまいたくなることも。

けれども、もしかすると子供本人も、望んで今のような生活リズムを送っているわけではないかもしれません。

今回はこうしたリズムの乱れや寝起きの体調不良に関係する「起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation)」を紹介します。

なお、「睡眠リズム」について詳しく知りたい方は、以下のコラムもご参照ください。


睡眠リズムと不登校 家族も睡眠リテラシーを身につけよう
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「起立性調節障害」って何?

起立性調節障害(以下、OD)とは、起き上がる時や、立った姿勢が続く時などに、めまいや立ちくらみ、疲労感、失神などの症状が出る病気のこと。

不登校の約3~4割には、ODが併存しているとも言われています。

ODには様々な発症要因が考えられます。特に影響が大きいとされているのが、身体の自動調整機能である、自律神経の不調です。

例えば、起立した状態でも、血液が重力に逆らって脳をはじめとした重要な臓器に送られるのは、自律神経が血圧などを調整してくれているおかげです。

しかし、ODを発症するとそうした自律神経の働きに困難が生じ、起床時に十分な量の血液が脳に届かず、「朝、起きられない」という状況が生まれるのです。

こうした自律神経の不調がもたらす症状は、朝だけに現れるわけではありません。

自律神経は、「夜になると眠くなる」という、自然な眠気にも密接に関わっています。

ODを発症すると、その自然な眠気が生まれるサイクルが乱れてしまい、夜になると意識が覚醒してくる。つまり、「朝は辛そうにしていたのに、夜になったら元気そうに見える」という状態になり、一見すると「怠けている」といった誤解を生みやすい生活リズムになってしまうのです。

発症しやすい年代

ODには自律神経だけでなく、身体の変化や心の問題など、様々な要因が関わっているとされています。

ODの発症年齢は、早いと10歳くらい。思春期に発症しやすく、軽症例も含めると中学生のOD有病率は約10%と言われています。

これは、成長期に訪れる身体の様々な変化が要因になっていると考えられています。

例えば、成長期を迎えて身長や体重が大きく変化すると、それに伴い、身体の各部位が必要とする血液量なども変化します。そうした身体の変化と、自律神経やホルモンなどのバランスがうまく取れなくなることも発症の要因であると考えられているのです。

また、成長期は心に様々な変化が訪れる時期でもあります。大人になっていくにあたり、これまでには気づかなかったことに意識が向くようになり、精神的な負担(ストレス)が大きくなりがちです。このストレスも自律神経を乱す、ODが発症する要因のひとつだとされているのです。

診断法と治療法

ODかどうかを診断するためには、病院で診察を受ける必要があります。

基本的には小児科を受診することになります。(高校生以上の場合、小児科では受け付けていないこともありますので、循環器内科などを受診しましょう。)

診察ではまず、ODかどうかを確認する簡単なスクリーニングテストが行われます。その後、姿勢の変化による血圧や心拍数の変化などを調べ、より細かい分類を行うというのが基本的な流れです。

そうした診察結果や分類などをもとに、医師による指導が行われます。多くの場合は生活指導などが中心です。

診察の結果を踏まえて、その人の場合には「どのような環境を用意すれば、朝起きやすくなるのか」「どのような生活習慣を持てば、自律神経の働きを改善できるか」といったアドバイスや、具合が悪くなりづらい「立ち上がり方」「起き上がり方」の指導などが行われます。

生活指導で改善が乏しい時などは、病状に応じて服薬指導が行われる場合もあります。

なお、インターネットでODについて調べると、セルフチェックシートのようなものを見かけることがあるかもしれません。これらは、あくまでも「可能性」に気づくきっかけとして利用するためのもので、必ずしも正確な診断を保証するものではありません。

安易な自己診断ではOD以外の病気が原因である可能性などを見落としてしまうこともあります。基本的には医療機関にかかるようにしましょう。

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望ましいコミュニケーション

冒頭でも述べたとおり、ODに起因する体調不良は「怠けている」かのように見えてしまうことがあります。

しかし、ストレスなどを原因として発症している場合もあるため、強く叱るとかえってそのストレスを増やしてしまうことも。

また、ODが改善したとしても、学校にすぐ通えるようになるとも限りません。

不登校の背景にODがある場合、「身体的要因」に心の問題が関与していたり、逆に「心の問題」に身体的要因が影響を与えていたりと、ODだけでない様々な要因が複雑に影響し合っているからです。

何か一つを解決すれば「学校に行けるようになる」わけではないのです。

だからこそ、大切なのは「学校に行けない」という状態を子供からのSOSであると捉え、まずは「一緒に解決しよう」という寄り添いの姿勢を持つこと。

医療の力を適切に借りながら、少しずつ、お子さんが安心して生活できる生活環境を整えていきましょう。

記事を監修した人

小児科専門医・小児神経専門医 宮本 健

宮本 健 小児科専門医・小児神経専門医

浜松医科大学卒業後、国立精神・神経医療研究センターにて研鑽を積み、現在は浜松医療センター小児科部長。


村山 恵子 小児科専門医、小児神経専門医

浜松医科大学卒業後、一般小児科、新生児科、心身障害児総合医療療育センター等の勤務を経て、2007年げんきこどもクリニック開業。

【参考文献】


■一般社団法人日本小児心身医学会. (2021). 起立性調節障害. 日本小児心身医学会一般の皆様へ/小児の心身症‐代表的疾患. 取得日: 2025年9月18日,
https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/