コラム
2026.1.28
睡眠リズムと不登校 家族も睡眠リテラシーを身につけよう
目次
家族で取り組む「遅寝遅起き」への対応
不登校と「睡眠」には、深い関係があります。
文部科学省の調査では、不登校の小学生の26.2%が「生活リズムの不調に関する相談」をしていたというデータが得られています。
また、不登校の中学生を対象とした民間の調査では、学校に行きたくない理由として「朝、起きられない」が1位という結果になっているのです。
夜はなかなか眠らないうえ、朝はどれだけ声をかけても目を覚さない。「このままじゃ、学校に行くどころか、社会生活すら苦労してしまうのでは……」と、不安を抱えている保護者も多いのではないでしょうか。
こうした「遅寝遅起き」(専門的には「睡眠・覚醒相後退障害」といいます)の状態を改善するのは、簡単ではありません。
例えば、子供を起こそうとして声をかけたのに、寝ぼけた状態の子供に暴言を吐かれたり、場合によっては手を挙げられたり……(こうした状態を「睡眠酩酊」といいます)。
その結果、家族が子供を起こすのを諦め、さらに「遅寝遅起き」が進む負のループに陥ってしまうーー。そういった光景は珍しくないのです。
なお、「目が覚めていても起き上がれない」場合は、起立性調節障害などの併存も疑われますので、以下のコラムもご参照ください。
「起立性調節障害」って何?――朝、起きられないのは「怠けている」から?
睡眠リズムが乱れる3つの理由
そもそも、こうした「遅寝遅起き」は、どうして発生するのでしょう。そこには様々な要因が存在しますが、ここでは特に大きなポイントを3つ紹介します。
第一に「そもそも、睡眠時間が足りていない」という可能性です。
アメリカ睡眠学会が設定した推奨睡眠時間は、6~12歳が9~12時間、13~18歳は 8~10時間となっています。「想像していたより長い」という印象を持たれたのではないでしょうか。
実際に日本の小学生の場合、平日の平均睡眠時間は男子8.9時間、女子8.8時間。中学1年生の場合は男子が7.9時間、女子が7.5時間と、推奨睡眠時間を確保できていない子供が大半であることがわかっています。つまり、そもそも睡眠時間が足りていないため起床できていない可能性があるのです。
第二に「生物学的な変化」が影響している可能性です。
小学校高学年以降、思春期になると、ホルモンなどの影響から睡眠する時間帯が最大2時間ほど後ろ倒しになることが明らかになっています。
つまり、小学校中学年頃までは意識せずとも朝起きて活動できていた子供でも、この頃からは朝起きにくくなり、日中の眠気が増大し、夜は寝つきにくくなるのです。
第三に、「社会的な影響」です。
小学校高学年頃からは、上記の生物学的な変化に加え、夜遅くまで学習や課外活動に取り組むことが増え、スマホなどの普及も加わり、夜更かしをしやすい環境になります。
加えて、この時期は生物学的変化に逆行して、通学や部活動などを理由として早起きが求められはじめる時期でもあります。
その結果、睡眠時間がより不足したり、体内時計と実際の生活がズレたりしてしまい、睡眠リズムが崩れやすくなってしまうのです。
睡眠リズムと不登校
しかし上記のような要因がありつつも、小学校高学年になると全員が学校に行けないほどの睡眠問題を抱えるようになるわけではありません。また、現在不登校で睡眠リズムが乱れていたとしても、不登校の理由が「睡眠」であるとも限りません。
実際には「起きられない」ことを理由に不登校になっているケースもあれば、不登校がきっかけで睡眠に課題を抱えているケースもあります。「ニワトリと卵」とも言えるのです。
例えば、「遅寝遅起き」の傾向が出始めたとしても、「登校」を通じて日光を浴びたりすることで、そうした睡眠リズム変化の傾向が抑えられることがあります。
しかし、不登校になり通学など日中の外出の機会が減ることで、そうした要素がなくなり、「遅寝遅起き」が加速することがあるのです。
では、こうした睡眠リズムの乱れを改善するために家族ができることには、何があるのでしょう。
家族にできること①無理に早く起こさない
まず大切なのは、必要な睡眠時間を理解し、無理に早朝に起こさないようにすること。言い換えれば、十分な睡眠時間を確保した状態で起こすようにすることです。
例えば、深夜3時頃にやっと寝た子供を、「学校に行かせなきゃ」と朝6時に起こそうとしても、睡眠時間が足りないと、なかなか起きられるものではありません。
むしろその状況で起こそうとすると睡眠酩酊が出やすく、家族は疲弊してしまうばかりです。
将来的には就寝を前倒ししていく必要がありますが、その前段として、まずは「その子が起きられる時間に起こす」を徹底しましょう。
家族にできること②生活習慣を作る
次にすべきは「生活習慣」を作ることです。
急に早寝早起きに整えていくことは難しいことが多いです。寝る時間・起きる時間が不規則な場合、まずは、多少遅くてもよいので、毎日ほぼ同じ時刻に寝起きすることを目指してみましょう。
そのためにも、「生活習慣」を作ることが大切。
例えば、お風呂の時間を一定にしてみてはいかがでしょう。おすすめは「眠りたい時間」の1時間ほど前にお風呂に入っておくことです。体温変化は眠気に大きく関わっているため、眠りたい時間に自然と眠気が訪れます。
また、寝る時には、睡眠を促せる、静かで暗い環境を整えましょう。
さらに、二度寝などを防ぐために、起床直後に陽の光を浴びる習慣を作ることもおすすめです。日光や明るい光には、朝浴びることで、夜に自然な眠りを促す効果があります。
けれども一つ、注意があります。遅寝遅起きの子供に「とりあえず朝6〜7時に光を浴びせる」はやめましょう。
深夜3時に眠った子供が朝6時に日光を浴びるということは、夜10時に眠った子供が、午前1時に光を浴びるようなものです。
つまり、夜中に光を浴びたのと同じような効果が出てしまい、むしろ睡眠リズムが乱れる原因になってしまうのです。
ですから、まずは「その人が無理なく起きられる時間」に日光を浴びる習慣を作るようにしましょう。
家族にできること③医療の力を借りる
最後に紹介するのは、医療の力を借りる方法です。基本的には睡眠外来になります。
睡眠外来とは、「何時に起きられるようになりたいか」など、睡眠の整え方に集中して支援してくれる場所。医師の指示にきちんと従えば、はやい子であれば半年ほどで改善することもあります。
子供向けの睡眠外来がある病院もあります。近くにあるか分からない、という場合、まずはかかりつけの小児科の先生に相談してみてもよいでしょう。
注意したいのは、必ずしも「睡眠を改善すれば登校できる」わけではないことです。不登校には様々な要素が絡んでいます。睡眠だけが問題ではない場合も多くあります。
とはいえ睡眠の問題(眠さや倦怠感など)は、本人も課題に感じていることがあり、他の不登校要因と比較して取り掛かりやすい問題です。状況を改善していくためのきっかけとして、通院を活用してみるのはいかがでしょう。
「睡眠」という視点を持つことは、本人の「困り感」を解決する糸口になる可能性があります。専門家を上手に頼る、ということを選択肢に入れてみてください。
NOTE
低年齢の子供の生活習慣づくり
低年齢の子供の場合、思春期による体の変化の影響はないため、本来は朝型の子供が多いです。睡眠リズムが乱れている場合には、夜は、「睡眠を促せる静かで暗い環境になっているか」、「十分な睡眠時間を確保できているか」を、まず見直してみるとよいでしょう。
記事を監修した人

小児科医
子供の不登校の診療に携わる。専門は、神経発達症と小児の睡眠。
【参考文献】
■文部科学省:令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
https://www.mext.go.jp/content/20251029-mxt_jidou02-100002753_2_5.pdf
■日本財団(2018):不登校傾向にある子どもの実態調査報告書
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/information/2018/20181212-6917.html
■Sakamoto N, Kabaya K, Nakayama M: Sleepproblems, sleep duration, and use of digital devices among primary school students in Japan. BMC Public Health. 22(1): 1006, 2022
■Ojio Y, Nishida A, Shimodera S, et al: Sleepduration associated with the lowest risk of depression/anxiety in adolescents. Sleep. 39(8):1555–1562, 2016.