コラム
2026.10.29
発達障害があるかもしれない、と思ったら
知っているようで知らない、「発達障害」の基礎知識
このコラムでわかること
「発達障害」という言葉、よく聞くことはあるけれど、実はよく分かってない・・・そんな方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「発達障害」の基礎知識や、困った時の相談先、病院受診のステップについて解説します。
目次
「発達障害」の基礎知識
まずは「発達特性」と「発達障害」の違いについて考えてみましょう。
「特性」とは、日々の生活の中で「他の子とちょっと違うかもしれない」と感じられる、その子なりの偏りや持ち味の段階を指します。一方で「障害」とは、その特性によって本人が「とても困っている」状態が現れ、かつ診断が付いた状態のこと。つまり、二つは地続きでありながら、別の概念なのです。
「診断」と聞くと、インフルエンザで病院に行くのと同じ感覚で、「早く受診して診断をもらった方が良い」と考えたくなるかもしれません。けれども、発達障害の場合は少し発想が異なります。
ここからは発達障害について詳しく掘り下げてみましょう。
発達障害の診断は、行動の様子や、生まれてから今までの育ちの様子などを、医師が総合的に見て判断することになっており、血液検査の数値などで明確に診断が付くものではありません。
何より知っておきたいのは、診断名が付いたからといって、そのお子さんの「困っている状態」が解決するとは限らない、ということです。薬の服用で、症状を軽減することができる場合もありますが、お子さんがご家庭や学校あるいは地域で困っていることの解決に直接はつながりにくい場合もあります。
だからこそ大切なのは、「診断が付くかどうか」よりも、お子さんが「今、何に困っているか」に目を向けることです。
一人で抱え込まないで ― 頼れる相談先
では、お子さんの発達について気になるところや不安なことがある場合、どうすればよいのでしょう?
いきなり医療機関を探すよりも、まずは身近な窓口を頼ってみるのも有効です。その代表的な窓口の1つが、「発達障害者支援センター」です。
発達障害者支援センターは、医療機関にかかる「前」の整理役として、また生活全般を一緒に考えてくれる相手として、頼ることができる場所。
発達障害者支援法に基づき、全国の都道府県や政令指定都市に設置されている公的な機関で、発達障害やその疑いについての様々な相談を受け付けています。
東京都では「東京都発達障害者支援センター(TOSCA)」がこれに当たり、18歳未満を対象としたこどもTOSCAと18歳以上を対象としたおとなTOSCAの2つがあります。
まず電話やメールで問い合わせ、現在抱えている不安などについて内容を聞き取ってもらった上で、必要に応じて来所して相談する、という流れが一般的です(一度の相談で気持ちや状況が整理できることもあれば、その後も継続して伴走してくれることもあります)。
こうした相談先は、状況を聞き取った上で適切な支援を紹介してくれるだけでなく、例えば「生育歴」(生まれたときの様子や、乳幼児健診で言われたこと、園や学校で指摘されたことなど)を一緒に整理してくれたりと、個々に合ったサポートをしてくれます。
「生育歴を聞かれる」と聞くと、「育て方を責められるのではないか」と心配になる方もいるかもしれませんが、心配は不要です。
生育歴は医療機関を受診する際に必ず聞かれることになるもの。いきなり医療機関でこうした話をするのは難しいものですから、事前準備をサポートしてもらえると考えれば大丈夫。
また、相談できる先は発達障害者支援センターだけではありません。子供家庭支援センターや、
各学校の特別支援教育コーディネーター、教育委員会の相談窓口、保健センターなどにも相談が可能です。まずは身近な相談先から、と考えておくとよいでしょう。
もちろん、はじめから医療機関にかかるという選択肢もあります。お子さんの場合は、まず小児科――児童精神科や小児神経科、発達外来など――が窓口になります。ただし、予約が数か月から一年待ちになることも珍しくありません。
診断は、数回通院しながら、問診や検査、行動の観察を重ね、結果の説明を受ける、という流れが一般的です。
診断名は、お子さんの困りごとを知る「手がかりのひとつ」
病院で診断が出た後についても、少しご紹介します。
まず、診断名は、そのお子さんの全てを言い表すものではありません。診断を受けることは「ゴール」でも「終わり」でもなく、お子さんの困りごとを知るための「手がかりのひとつ」として受け止めるのがよいでしょう。
診断を受けることで得られる支えもあります。診断を通じて障害者手帳を取得できると、医療費の助成や手当の支給などを受けられることがあります。
もちろん、「だから絶対に診断を受けたほうがいい」というわけではありません。ご家庭の状況やお子さんの様子に合わせて考えていけば十分です。そうした判断においても、発達障害者支援センターなどは支えになってくれるはず。
発達障害は「治す」ものではなく、環境や時期によって、強く出る時期もあれば、あまり気にならない時期もあります。だからこそ支援も一度きりで終わるものではなく、そのときどきの困りごとに合わせて、一緒に考えていくもの。発達障害者支援センターは、そうした支えになってくれます。
どうか、一人で抱え込まないでください。相談先や専門家、学校を頼りながら、そして保護者ご自身のケアも大切にしながら、お子さんと歩んでいっていただけたらと思います。
こどもTOSCA 担当者より
発達障害の診断がない場合でも、特性と思われることに関連することであれば、日常生活のこと、学校のこと、人との関わり方に関すること等、様々な相談が可能です。
まずはお気軽にお問合せください。
https://www.tosca-net.com/
NOTE
発達特性については、以下のコラムもご覧ください。
発達特性や感覚過敏がある子供への支援―「行けない理由」を子供自身が話せるとは限らない
東京都では、発達期(18歳未満)に何らかの原因により知的機能の障害がおこり、そのために日常生活に相当な不自由を生じ、福祉的配慮を必要としている方に愛の手帳を交付しています。
※自閉症スペクトラム障害などの方で、知的障害を伴うと判定された場合には、愛の手帳が交付されます。(知的障害を伴わない場合は、愛の手帳の交付対象とはなりません。)
詳細は以下のリンク先をご覧ください。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jicen/ji_annai/a_techou
記事を監修した人

静岡県中西部発達障害者支援センターCOCO 相談員
小学校教諭として教壇に立った後、特別支援学校の教諭・教頭・副校長・校長を歴任。現在は発達障害者支援センターの相談員として、発達特性をめぐり不安を抱える保護者に日常的に向き合っている。