コラム

2026.8.27

学習障害と不登校

「この子にあった学習方法」を見つけよう

学習障害と不登校のイメージ画像

このコラムでわかること

「読む」「書く」「計算する」など特定のことに困難を抱える「学習障害(LD)」のある子供たちは、勉強のつまずきから不登校につながることがあります。本記事では、その子に合った学び方を見つけるためのヒントを紹介します。


目次

不登校の背景にある「勉強のつまずき」

不登校の背景には、友人関係や家庭環境などさまざまな要因がありますが、その中でも大きな要因のひとつとして挙げられるのが、「勉強についていけない」というつまずきです。

文部科学省の『不登校の要因分析に関する調査研究』において、不登校の子供が経験していることとして教師・本人・保護者の三者が一致して挙げたのが「学業の不振」と「宿題ができていない」でした。

また、「直近で成績が下がった経験がある」と教師が答えた割合は、不登校でない子では1.5%だったのに対し、不登校だった子では12.9%と、開きがあることが分かりました。

もちろん、勉強のつまずきがそのまま不登校の原因になるわけではありません。けれども、お子さんが「学校に行きたくない」と感じているとき、その背景に「勉強がついていけない」という苦しさが隠れている可能性は、十分にあるといえます。

「学習障害(LD)」って、どんなもの?

勉強につまずく理由は子供によってさまざまですが、その中でも近年注目されているもののひとつが、「学習障害(Learning Disabilities、以下LD)」です。

LDとは、知的な発達には大きな遅れがないにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」「聞く」「話す」「推論する」といった特定のことだけが、極端に苦手という状態を指します。

例えば、普段はおしゃべりが上手なのに、教科書の音読になると急にたどたどしくなってしまう。お話の内容はしっかり理解できているのに、ノートに書き写すと人一倍時間がかかってしまう――。こうした「特定のことだけが極端に苦手」という偏りは、本人の努力不足によるものではないと考えられています。

LDは脳の働き方の特性によるものとされており、本人がいくら頑張っても簡単に克服できるものではありません。むしろ「もっと頑張りなさい」と言われ続けることが、本人を追い詰めてしまうこともあるのです。

「うちの子だけが苦労しているのでは」と感じる方もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。文部科学省の調査によると、通常の学級にも学習面で著しい困難を抱える子供が一定の割合でいることが分かっており、決して特別なことではないのです。

LD≠不登校。分かれ目は「学び方」

LDがあるお子さんが必ず不登校になるわけではありません。分かれ目は、「その子に合った学び方」が見つかっているかどうかにあります。

学校では、長らく「みんな同じやり方で学ぶ」のが当たり前とされてきました。けれども、その学び方とお子さんの特性が合っていない場合、思った以上に大きな負担がかかってしまうことがあります。

例えば「音読」。本来は内容を理解するための学習方法ですが、読みに困難があるお子さんの場合、声に出して読み上げることだけで精いっぱいになり、肝心の内容が頭に入ってこないことがあります。

また、フォントの違いによって同じ文字が「別のもの」に見えてしまったり、ノートのマス目や罫線が、書字の「ガイド」ではなく「ノイズ」になってしまったりするお子さんもいます。黒板の文字を写すのに、黒板とノートを何度も見比べることになるお子さんもいれば、文字を書くこと自体に意識の大半が向いてしまい、自分が伝えたいことを表現する余裕がなくなってしまうお子さんもいます。

つまり、LDのお子さんが直面する困難は、一人ひとり違うのです。「LDがある子全員にこれさえあれば大丈夫」という万能の方法は存在しません。だからこそ、その子の特性に応じて「合う学び方」を一緒に探していくことが大切です。

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こうした考え方を後押しするように、近年は「LD」のとらえ方そのものにも変化が見られます。日本LD学会の用語解説では、「LD」を「Learning Disabilities(学習の障害)」ではなく「Learning Differences(学び方の違い)」と捉え直す動きが紹介されています。

子供の側に「障害」があるのではなく、現在提供されている学び方が、その子に合っていないだけなのかもしれない――。そう視点を変えるだけで、見えてくる景色は大きく変わります。

保護者にできること

学習障害と不登校のイメージ画像 では、保護者として具体的にできることには、何があるのでしょう。出発点となるのは、「学校の当たり前を、子供にも当たり前に求めない」というマインドセットです。

大人の私たちも、パソコンの画面を「ダークモード」にしたほうが目が疲れない人もいれば、白い背景のほうが集中できる人もいます。お子さんの学びにも同じことが言えます。「みんな同じ道具・同じ方法で学ぶべき」という前提を少し見直し てみるだけで、合う学び方が見つかることがあります。

書くことに困難があるお子さんなら、鉛筆の太さや長さ、重さを変えてみるなど。 それだけで書きやすさが大きく変わることがあります。

読むことに困難があるなら、教科書の上に「カラーオーバーレイ」と呼ばれる色付きの透明シートを重ねてみる。タブレットなら、アクセシビリティ機能の「カラーフィルター」を活用してみる。文字の見え方を整えるだけで、読みやすさが格段に上がるお子さんもいます。

「内容を理解する」ことが目的なら、「音読」にこだわる必要はありません。保護者による「読み聞かせ」や、タブレットの「読み上げ機能」を活用すれば、内容理解そのものに集中できます。算数の計算が大変なお子さんなら、 式を立てるまでは自分の力で取り組み、計算そのものは電卓を使うという方法もあります。こうしたささやかな工夫が、お子さんにとっては「学ぶことができる」という体験を取り戻すきっかけになり得るのです。

近年は、デジタル教材や読み上げ機能、見やすいフォントなど、多様な学び方の選択肢が広がってきています。「全員が紙の教科書を使うべき」「全員がデジタル教科書を使うべき」という二者択一ではなく、お子さん一人ひとりに合ったものを選べる時代になってきているのです。

そして、保護者の方だけで抱え込まないことも、とても大切です。学校に置かれている
特別支援教育コーディネーター」は、頼れる相談先のひとつ。
特別支援教育コーディネーターは、特別な支援が必要な児童生徒に関わる担任や学校外の専門家などと連携しながら、どうサポートするかをまとめていく専門の先生です。
担任の先生を窓口にして「うちの子の学習面が心配です。」と伝えれば、コーディネーターと連携しながら、お子さんに合った支援を一緒に考えてくれます。

学校の外にも頼れる場所があります。公的機関である「発達障害者支援センター」では、LDを含む発達障害に関する相談を幅広く受け付けています。
発達障害者支援センターには、心のケアを行う専門家や発達をサポートする専門家などがいます。さらに、日々の生活や健康づくりを助ける福祉・保健の専門家もいて、さまざまな視点からお子さんや家族を支えてくれます。

東京都には東京都発達障害者支援センター(「TOSCA」)として「こどもTOSCA」と「おとなTOSCA」という2つの拠点があり、まずは話を聞いてみるだけでも、新しい視点が得られるはずです。

特別支援教育コーディネーターや発達障害者支援センターへの相談をきっかけに、地域の児童発達支援センターや保健センター、子ども家庭支援センターなど、別の窓口につないでもらうことができます。
また、発達障害の診察をしている小児科や心療内科などの医療機関に直接相談してみるのも一つの方法です。東京都のウェブサイトで都内の「発達障害医療機関リスト」が公開されているので、そこから自分に合った病院を探すことができます。

「もしかしたら、この子の学び方は少し違うのかもしれない」――。そう気づくことが、何より大切な最初の一歩です。保護者の方が抱え込まず、学校や専門機関と一緒に、お子さんに合った学び方を少しずつ探していく。その積み重ねが、お子さんの「学ぶ力」を、やさしく支えてくれるはずです。

記事を監修した人

一般社団法人共生と共育ネットワーク 理事 木村 尙文

津久井 伸明 公益社団法人 子どもの発達科学研究所 副主任研究員
博士(小児発達学)/公認心理師/特別支援教育士SV

小学校教諭を経て、現職。子どもの発達と学習に関する研究・支援に携わる。専門は、特別支援教育、学習障害(LD)、子どもの発達科学。

【参考文献】


■公益社団法人 子どもの発達科学研究所「文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究 報告書 令和6年 3 月公表」
https://www.mext.go.jp/content/20251120-mxt_jidou02-100002768_1.pdf

■文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(令和4年)
https://www.mext.go.jp/content/20221208-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf

■一般社団法人 日本LD学会「LD・SLDの定義」(用語解説)
https://www.jald.or.jp/info/glossary/

■文部科学省「特別支援教育について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm